海外へ引っ越す落とし穴
不動産屋さんが知らない事
海外転勤や移住、結婚、長期滞在――。
日本を離れる決断をするとき、誰もが考えるのは新しい生活の準備です。
しかし、意外と忘れられがちなのが「日本に残る不動産の扱い」。
特に、海外に住民票を移した後に不動産を売却しようとすると、
税金・手続き・資金受け取りにおいて思わぬ制約が発生します。
「非居住者になるとどんなデメリットがあるの?」
この問いに明確な答えを持たずに出国してしまうと、
あとで「知らないと損するね」と実感することになりかねません。
出国の瞬間に“税の立場”が変わる
まず知っておくべきなのは、「海外に住民票を移す=非居住者になる」ということです。
非居住者とは、日本国内に住所を持たず、1年以上日本に居住していない人を指します。
非居住者になると、同じ不動産を持っていても、税金のルールが変わるのです。
居住者として売却する場合は、
3,000万円特別控除
買い替え特例
住宅ローン控除の継続適用
といった優遇制度が使えますが、
非居住者になった途端、これらが使えなくなるか、あるいは期間が短縮されるという現実があります。
つまり、「売却するなら、いつ出国するか」を見極めることが非常に重要になるのです。
非居住者になるとどんなデメリットがあるの?
海外へ引っ越した後に売却する場合、次のようなデメリットが発生します。
① 3,000万円特別控除が使えない
居住者がマイホームを売却した場合、
「居住用財産の3,000万円控除」が適用され、譲渡益から最大3,000万円まで非課税になります。
ところが、非居住者になるとこの特例は使えません。
たとえば4,000万円の利益が出た場合でも、3,000万円を差し引けず、
全額に対して約20%の譲渡所得税が課税されてしまいます。
さらに注意が必要なのは、控除が利用できる場合でも、期間が短くなってしまうケースです。
出国直前に売買契約を結んでいたとしても、実際の決済・引き渡しが非居住者になった後であれば、
特例が適用されない、または一部しか使えない可能性があります。
つまり、「契約日」だけでなく「引き渡し日」「決済日」まで含めてスケジュールを組まないと、
思わぬ税金を負担することになるのです。
② 買主が“代わりに税金を支払う”
非居住者が不動産を売ると、買主が売主の代わりに税金(源泉所得税)を支払う義務があります。
これを「源泉徴収制度」と呼び、売買代金の10.21%を買主が税務署に納めます。
たとえば5,000万円で売却する場合、
約510万円が源泉徴収として差し引かれ、残りしか受け取れません。
これは居住者取引にはない仕組みです。
手続きが複雑になるうえ、売主にとっては資金計画が狂う要因にもなります。
③ 納税管理人を選任しなければならない
非居住者になると、確定申告や税金の払い戻しを行うために「納税管理人」を日本国内に設置する必要があります。
この納税管理人がいないと、売却の際に税務手続きが進められません。
身近に頼める人がいない場合は、専門家(税理士など)に依頼することになりますが、
依頼費用や手続きの時間がかかるため、思い立ってすぐに売ることができないのです。
不動産屋さんが知らないこと
多くの不動産会社は、国内居住者を前提に業務を行っています。
そのため、非居住者の税務・法務に詳しくない担当者も少なくありません。
たとえば――
住民票を抜く前に売却したほうが良いことを知らない
源泉徴収の有無を説明できない
納税管理人の届出義務を把握していない
こうした“知識のズレ”が、売主に損失を与えることもあるのです。
「売ることはできても、残すことができない」――
それが、海外転出を控えた売主が陥りやすい最大の落とし穴です。
知らないと損するね ― 出国前に決めておくべき3つのこと
では、どうすれば損を防げるのでしょうか。
出国前に、次の3つを明確にしておくことがポイントです。
1. 売却のタイミング
出国前(居住者のうち)に売却を完了させるのが理想です。
契約・決済・引き渡しまでを日本にいるうちに終えることで、
特例や控除を最大限活用できます。
2. 税務シミュレーション
売却価格・取得費・控除の有無によって、最終的な税額は大きく変わります。
事前に税理士や専門家と連携して、どのタイミングで売るのが最も有利かを試算しておくことが重要です。
3. 納税管理人・銀行口座の準備
もし出国後に売却する可能性がある場合、納税管理人を早めに選任し、
売却代金を受け取る国内口座も確保しておきましょう。
これを忘れると、入金や還付が滞る恐れがあります。
当社では「海外移住前の不動産売却計画」をサポート
当社(ジージーコネクト株式会社)では、
これから海外に転居される方、またはすでに非居住者になっている方に向けて、
税務・法務・売却実務をトータルで支援する体制を整えています。
出国前に売却を完了させるためのスケジュール設計
3,000万円控除や特例を最大限活かすための提案
納税管理人の届出サポート
税務署・金融機関とのやり取りの代行(専門家連携)
「売る」だけでなく、「残す」までを見据えた売却戦略を一緒に立てることで、
安心して新しい海外生活をスタートできるようお手伝いします。
まとめ ― 出国前の“ひと手間”が、未来の安心に変わる
海外へ引っ越す際、不動産の売却は単なる手続きではなく、資産をどう守るかという戦略的判断です。
非居住者になると、
3,000万円控除が使えない(または期間が短くなる)
源泉徴収で手取りが減る
手続きが複雑になる
こうした不利益は、出国前に少し準備するだけで防ぐことができます。
「もう少し早く知っていれば…」と後悔する前に。
海外へ渡る前の今だからこそ、不動産の整理と売却計画を立てる価値があります。
未来の暮らしをより軽やかに、安心してスタートするために――。
その第一歩は、「出国前に不動産をどう扱うか」を考えることから始まります。
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