不動産屋さんがあまり教えてくれない事
家を売る――。
その瞬間、誰もが考えるのは「いくらで売れるか」そして「どれくらい手元に残るか」。
しかし、実際に決済を終えてみると、思ったよりも手元に残るお金が少なくて驚く方が少なくありません。
なぜでしょうか。
それは「売却価格」と「利益(譲渡所得)」がイコールではないからです。
そしてもう一つ、見落とされがちな事実――
“たった一枚の領収書”が、数十万円から数百万円の差を生むことがあるということです。
「その領収書ってそんなに大切だったの?」
この記事では、まさにその答えを掘り下げていきます。
売却して終わり、ではない ― 「手元に残る額」が本当の利益
不動産を売却したとき、譲渡益(いわゆる売却益)が出ると税金がかかります。
この税金は「譲渡所得税」と呼ばれ、売却価格から“取得費”と“譲渡費用”を引いた残りに対して課税されます。
式にするとこうです:
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用)
この計算式を見て「なるほど」と思う人は多いかもしれません。
でも本当に理解している人は少ないのです。
なぜなら、この“取得費”の中身こそが、支払う税金を減らし、手元に残るお金を増やす最大のポイントになるからです。
取得費にはどんなものがあるの?
多くの人が「取得費」と聞くと、単純に「購入時の物件価格」と思いがちです。
しかし実際には、それだけではありません。
たとえば、次のような費用もすべて“取得費”として計上できる可能性があります。
物件購入時の 仲介手数料
登記費用、登録免許税、司法書士報酬
不動産取得税
契約書に貼った印紙代
建築時・購入時の設計料、工事監理費
リフォーム・増改築にかかった費用(内容による)
測量費や境界確定の費用
これらを一つひとつ丁寧に積み上げていくことで、取得費が増え、課税される譲渡所得が減るという仕組みです。
つまり、手元に残るお金を増やすためには、**「どんな費用を取得費として認めてもらえるか」**を知ることが何より重要なのです。
領収書一枚が何十万円を変える
「そんな昔の領収書、もう捨てちゃったよ」
という人も多いでしょう。
しかし、仮に10年前にリフォームした工事費用が300万円かかっていたとします。
それを証明できなければ、取得費に加えることができず、結果としてその分の税金を多く支払うことになります。
所得税・住民税を合わせると、譲渡所得税率は約20%(長期譲渡の場合)。
つまり300万円 × 20% = 60万円の差が出るのです。
「え、たった一枚の領収書で60万円も?」
そう思うかもしれませんが、これは現実に起きていること。
そしてそれが、不動産屋さんがあまり教えてくれない“真実”なのです。
不動産屋が「税金の話」を深く教えない理由
不動産仲介の仕事は「売買契約を成立させること」。
そのため、税金の計算や申告のサポートまでは、原則として業務の範囲外です。
もちろん、信頼できる不動産会社であれば、税理士と連携してアドバイスを行うこともあります。
しかし、一般的には「税金の話は税理士に聞いてください」というスタンスが多いのが現実。
結果として、売主自身が税金の仕組みを理解しないまま取引が進み、支払う必要のない税金まで払ってしまうケースが少なくありません。
ここで大切なのは、
「売る前に」「税金を見据えた準備をしておく」
という意識です。
取得費の裏に潜む“見落としポイント”
取得費の中でも、特に見落とされやすいのが次の3点です。
リフォーム費用の扱い
→ 修繕(原状回復)は経費にならず、資本的支出(価値向上)は取得費になる。
この区別を誤ると、控除できる金額が大きく変わる。親族からの相続・贈与のケース
→ 相続で取得した場合、被相続人(亡くなった人)の取得費を引き継ぐ。
古い資料や契約書が残っていない場合は、**概算取得費(売却価格の5%)**しか認められない。建物の減価償却
→ 購入後の経過年数によって、建物部分の価値は減少していく。
その分を差し引いた“残存価額”が実際の取得費となる。
これらの計算や確認は、一般の人には非常に難しい部分です。
しかしここを丁寧に整理しておくことで、税金を数十万円〜数百万円単位で減らせる可能性があります。
支払う税金を減らすための「準備」とは
税金を減らすためのコツは、特別な裏ワザではありません。
正しい知識と正確な記録、そして証明できる書類を揃えること――これがすべてです。
購入時・建築時の契約書や請求書
銀行振込明細
リフォームや修繕の領収書
登記や測量などに関する証明書
税金支払いの領収書(取得税・印紙税など)
これらはすべて、後から「取得費」として証明できる大切な資料です。
たとえ今すぐ売却する予定がなくても、**将来の売却時に税金を減らす“資産”**になる。
つまり、日々の支出記録がそのまま「節税効果」を生むのです。
税金をコントロールする人が、最終的に得をする
不動産売却で「高く売れた」ことを喜ぶ人は多いですが、最終的に手元に残る金額を見て驚く人も少なくありません。
実際、売却後の税金を正しく把握していないと、想定外の出費に頭を抱えることになります。
しかし逆に、取得費を正しく算出し、控除や特例をしっかり適用すれば、同じ売却価格でも手残りは大きく変わるのです。
つまり、“税金を知っているかどうか”が、売却の最終的な成果を左右します。
売る前にできること ― 調査と確認がカギ
不動産を売る前に、「うちの家の取得費はいくらなのか」「書類は揃っているのか」を確認することが、最大の防御策になります。
契約書や領収書の有無
登記関係の整合性
相続・贈与の場合の取得時期や金額
リフォーム履歴の確認
こうした点を整理しておけば、売却時の税金シミュレーションもより正確に行えます。
当社では、こうした 「取得費に関する調査」「書類の確認」 を専門家と連携して行うことが可能です。
権利関係や法務書類、登記履歴など、見た目ではわからない部分も徹底的に調べ、正しい取得費を確定させるサポートを行っています。
まとめ ― 「領収書1枚」が未来を変える
「取得費にはどんなものがあるの?」
そう思って調べ始めた人ほど、意外とその奥の深さに驚くはずです。
不動産売却で支払う税金を減らすことは、裏技でも節税テクニックでもなく、
“正しく証明する”ことがすべて。
そのための証拠が、領収書や契約書であり、
その一枚一枚があなたの資産を守る「盾」になります。
売却で得たお金をどれだけ多く手元に残せるかは、
売却価格よりもむしろ、**「準備の精度」**で決まります。
不動産屋さんがあまり教えてくれないこの領域。
しかし、知っている人だけが得をする。
そして、その第一歩は――捨てずに取っておいた、たった一枚の領収書から始まるのです。
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