本日からスタート?――住宅業界に静かに訪れる「4号特例」見直しのインパクト

query_builder 2025/04/01
空き家 ブログ お知らせ
本日からスタート?――住宅業界に静かに訪れる「4号特例」見直しのインパクト

家を建てる、あるいは住まいを改修する。こうした「住」に関わる行為には、必ずといっていいほど建築基準法が関係してきます。中でも、これまで長きにわたって“抜け道”のような存在として知られてきたのが「4号特例」。小規模な木造住宅に対する建築確認の手続きが簡略化されることで、住宅建築のスピードやコストを下げてきたこの制度は、実に40年以上の歴史を持っています。

しかし2025年、その「常識」が大きく揺らぎ始めました。

「4号特例がスタート」と聞いて、ピンと来る方は少ないかもしれません。というのも、今回の改正は“新しい制度が始まる”というより、“古い仕組みが終わりを迎える”ことを意味しているからです。目立たず、しかし確実に。住宅業界の根幹を支えてきた仕組みに、静かに大ナタが振るわれようとしています。

とりわけ、リフォームやリノベーションを検討している方にとっては、看過できない変化です。なぜなら、「確認申請が不要だったはずの工事が、突然必要になる」という事態が現実のものとなるからです。もちろん、すべての工事が該当するわけではありません。しかし、これまでスムーズに進んでいた工程がストップしたり、追加の書類提出が求められたり、あるいは工期が伸びるといった影響が出てくる可能性があるのです。

本記事では、この「ほとんど知られていない」制度改正が、なぜ今行われるのか、どのような背景があるのか、そして実際にどのような影響をもたらすのかを、可能な限りわかりやすく解説していきます。また、今後リフォームやリノベーションを計画するうえで「何に気をつければいいのか」についても、具体的な視点からアドバイスをお届けします。

今、まさに静かに始まった“建築業界のルール変更”。その全貌を、今ここで知っておくことが、これからの住まいづくりを左右する大きな判断材料となるかもしれません。

4号特例とは何か?

〜制度の概要とこれまでの運用〜

建築基準法は、日本において建物を安全に、そして適切に建てるためのルールブックです。その中で、「4号特例」は、小規模な住宅に対する建築確認申請の手続きを一部簡略化する制度として、長年にわたり運用されてきました。正式には「建築基準法第6条第1項第4号」に基づく特例であり、木造住宅を中心に多くの建築現場で活用されてきました。

この制度の対象となるのは、おおむね以下のような建築物です:

  • 2階建て以下

  • 延べ床面積が500㎡以下

  • 木造住宅

  • 戸建住宅など、比較的小規模なもの

こうした条件に該当する建物については、「構造・防火・避難」などの一部技術的基準に関して、確認審査機関が詳細なチェックを行わなくてもよい、というのが「4号特例」の骨子です。つまり、構造図や計算書の提出が省略され、設計者の責任のもとで工事を進めることができたのです。

この制度が生まれた背景には、昭和の高度経済成長期における住宅供給の加速という事情があります。当時は「とにかく数を建てる」ことが重要視されており、建築行政の効率化を図るために、ある程度の設計責任を設計者に委ね、行政の負担を減らす仕組みが求められていました。結果として、特例対象の建築物に関しては審査が省略されることで、確認申請が迅速に下り、工期やコストの短縮に寄与してきたのです。

加えて、実務面でも「慣習化」された運用が定着していきました。設計事務所、施工業者、行政機関それぞれが、制度の枠組みを前提とした業務フローを構築し、制度そのものが「空気のような存在」になっていたとも言えるでしょう。とくに木造住宅の世界では、確認申請なしでも工事が進められるという感覚が浸透しており、多くの関係者にとって4号特例は「当たり前」の存在となっていました。

しかし、「当たり前」の裏には、構造的な安全性への不安や、確認されないことによる設計・施工ミスの潜在リスクも潜んでいたのです。実際、震災や災害時には「なぜ確認が行われなかったのか」といった議論も起きるようになり、徐々にその在り方が問われるようになってきました。

次章では、こうした背景を踏まえて、なぜ今「4号特例」の見直しが行われることになったのか。その社会的背景と課題に迫っていきます。


なぜ今、制度の見直しが行われたのか?背景にある社会課題

4号特例は、長らく木造住宅の設計・施工を支える「合理化の象徴」として運用されてきましたが、その反面、「構造の安全性が担保されていない可能性がある建物が存在する」という懸念が、専門家の間でくすぶり続けていました。今回の見直しは、単なる法制度の整備ではなく、これまで見過ごされてきた構造的な課題と社会的ニーズが、ついに表面化した結果だと言えます。

■ 背景1:繰り返される自然災害と建物被害

日本は地震大国であり、毎年のように台風や集中豪雨といった自然災害に見舞われています。東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、そして能登半島地震(2024年)など、近年の大規模災害では、建物の倒壊や損傷が住民の安全を脅かし、被害の拡大要因ともなってきました。

これらの災害を通じて、特に木造住宅における「構造安全性の確保」の重要性が再認識されるようになりました。4号特例のもとでは、構造計算の確認がなされないまま建設されるケースも多く、設計ミスや簡略化による安全性の低下が指摘されてきたのです。

■ 背景2:現場の設計者・施工者任せの実態

特例制度により行政側の審査が省略されていたということは、裏を返せば、現場の設計者にすべての責任が委ねられていたとも言えます。信頼できる専門家であれば問題はないものの、十分な知識や経験のない事業者による設計や施工がなされた場合、そのリスクは施主や居住者が背負うことになります。

実際、構造計算書の提出が求められていなかったことをいいことに、無理な間取り設計や仕様の簡略化が行われ、結果として強度不足の住宅が生まれてしまった事例もあります。このような「制度の抜け道」を利用した設計・施工が、見直しのきっかけの一つとなりました。

■ 背景3:建築業界の技術進化と透明性の要請

近年、建築業界ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などの技術革新が進み、構造設計や性能評価の“見える化”が求められるようになっています。透明性と説明責任が問われる現代において、制度的に「見えないまま進めてよい設計」という枠組みが時代遅れになりつつあるのは、ある意味必然でした。

また、住宅購入者の目も肥えてきています。「安心して長く住める家」を求める声が増す中で、建築基準を満たしていることを明確に示せる住宅のニーズが高まっています。こうした消費者意識の変化もまた、制度の見直しを後押しする一因となったのです。

■ 背景4:国の住宅政策とサステナブル社会の推進

さらに大きな視点で見ると、国は脱炭素化や長寿命住宅の普及を政策として掲げており、品質の高い住宅の整備が今後の住宅政策の軸となっています。一定の性能を満たした住宅ストックを維持・拡大するためにも、制度的なチェック体制の強化は不可欠となりました。

このように、4号特例の見直しは、単なる行政手続きの変更ではなく、「安心・安全な住まいを、次世代に残していくための社会的要請」の一環といえるでしょう。

次章では、実際にこの制度がどのように変わったのか、改正内容をわかりやすく整理していきます。


改正後のポイント解説:具体的に何が変わったのか?

2025年4月、ついに4号特例を見直す法改正が本格的に施行されました。改正内容は一見すると専門的で複雑に思えるかもしれませんが、ポイントを押さえることで、これまでの違いや今後の注意点が明確に見えてきます。以下では、今回の見直しで**「何がどう変わったのか」**を、主なポイントごとに整理していきます。


■ ポイント1:構造審査が「原則必要」に

最大の変更点は、これまで省略されていた構造関係の審査が、原則として必要になったという点です。

従来の4号特例では、2階建て以下の木造住宅について、建築確認申請時に「構造に関する審査」を省略することが認められていました。しかし今回の改正によって、一定の条件を除き、構造図書の提出と審査が義務化されました。

つまり、今後は木造住宅であっても、「構造が本当に安全かどうか」を第三者(確認審査機関)がチェックすることになります。これにより、設計者の“自己判断”で構造を決めることができなくなり、より客観的で信頼性の高い構造設計が求められるようになりました。


■ ポイント2:「構造方法等の適用除外」が限定的に

これまでは、「建築士が設計すればOK」という大きな信頼に基づき、特例が広く認められていました。しかし、今後はその対象が大幅に絞られます。

具体的には、以下のような条件を満たす場合にのみ、これまでどおり構造審査が省略されることになります:

  • 延べ面積が200㎡以下

  • 高さ13m以下、軒の高さ9m以下

  • 建築士が構造安全性に関する説明責任を果たせる場合

このように、特例の“自由度”が大幅に狭まり、実質的には「多くの木造住宅で構造審査が必要になる」と考えてよいでしょう。


■ ポイント3:提出図書の種類と審査内容が明確化

改正後は、提出すべき書類の内容も明文化され、審査の透明性が高まりました。これまでは「必要に応じて」とされていた部分が、「構造計算書」「伏図」「軸組図」など、具体的に求められる図書が明確に定義されています。

これにより、確認申請の準備にかかる手間や時間は増加する一方で、設計内容がきちんと審査されることにより、設計ミスや施工不良のリスクが減るというメリットも期待されます。


■ ポイント4:確認申請にかかる期間と費用の増加

構造審査の導入によって、確認申請にかかる時間は従来よりも長くなる傾向が予想されます。また、審査内容の増加に伴い、申請手数料や設計費用が上がる可能性も否定できません。

これまで「すぐに着工できた」工事が、「申請のために1〜2週間待たなければならない」といったケースも想定され、計画スケジュールに余裕を持たせる必要があるでしょう。


■ ポイント5:民間確認機関の対応強化

国土交通省は、今回の改正に対応するため、民間の指定確認検査機関に対しても構造審査体制の強化を求めています。そのため、今後は確認申請の窓口によって審査のスピードや対応レベルに差が出る可能性もあります。信頼できる機関選びが、これまで以上に重要になるでしょう。


このように、4号特例の見直しによって、住宅の安全性を確保する方向に制度が大きく舵を切りました。次章では、こうした制度変更がリフォームやリノベーションにどのような影響をもたらすのか、具体的に見ていきます。


これが今後のリフォームやリノベーションにどのように影響するのか?

制度改正によって、4号特例の対象が大幅に縮小された今、最も気になるのは「この変化が、実際の住まいづくりにどんな影響を与えるのか?」という点です。特にリフォームやリノベーションの分野では、現場対応が一層求められる場面が増えることになります。ここでは、改正の影響が具体的にどう表れるのかを、いくつかの視点から解説していきます。


■ 工事のスケジュールが延びる可能性

今回の改正によって、リフォームやリノベーションでも確認申請が必要になるケースが増えます。たとえば、耐震補強や間取りの大幅な変更を伴う工事では、構造図や計算書の提出が求められる可能性があります。

これまでは申請を省略できたような工事でも、申請が必要になることで、設計・準備・審査という工程が加わり、着工までの時間が数週間延びることもあります。季節や引越し、資金計画などの都合でタイミングを図っていた人にとっては、スケジュール調整の難しさが増すでしょう。


■ 工事費用が上がる可能性

設計者が構造図書を新たに作成したり、構造計算を行ったりする必要が出てくるため、設計費や申請費用が上乗せされる傾向があります。

また、審査に通すためには、材料の強度や補強方法に一定の基準が求められることもあり、安価な仕様では通らない場合も。これにより、工事全体の見積もりが高くなり、結果として「予算オーバーで断念」となるケースも出てくるかもしれません。


■ 設計の自由度が制限される可能性

今回の改正で「構造安全性の説明責任」が重視されるようになった結果、設計者はより慎重にプランを立てるようになります。たとえば、吹き抜けを大きく取る、柱や壁を極端に減らすといった大胆な設計が敬遠されやすくなる傾向が考えられます。

また、「これまでなら問題なかった設計案」が審査に通らないといった事例も出てくる可能性があります。これは施主にとって、設計の自由度が実質的に狭まることを意味し、プランづくりにおいて専門家との綿密なすり合わせがより重要になります。


■ 小規模リフォームにも注意が必要に

「確認申請が関係するのは新築だけでしょ?」という声は、これまで多く聞かれてきました。しかし今回の改正では、既存住宅の一部改修や増築においても、審査対象となる可能性が出てきます。

たとえば、既存の木造2階建て住宅に屋根裏部屋を増設する、ベランダを耐震補強しながら拡張する、間仕切り壁を撤去して大空間に変更するといった工事は、構造的な変化を伴うため、構造図書の提出が求められるケースです。

今後は、「見積もりを取る前に建築士に相談する」「行政窓口で事前協議を行う」といった、下準備の手間と重要性が格段に高まることになります。


■ 中古住宅購入+リノベーションの計画に影響

「中古住宅を購入してリノベーションしたい」というニーズは年々増えていますが、今回の改正によって、リノベ前提の物件選びに新たな視点が必要になります。

たとえば、築年数の古い住宅で耐震性に不安がある場合、補強工事が申請対象となり、追加の構造検討が必要になります。これにより、想定外のコストが発生したり、購入タイミングと工事スケジュールのズレが生じたりする可能性があります。

結果として、「リノベ費用込みの総予算」で考えていた購入計画が崩れることもあるため、物件選定の段階から建築士などの専門家を交えた検討が不可欠になってくるのです。


このように、4号特例の見直しは、単なる新築住宅の話にとどまりません。今後のリフォーム・リノベーション市場においても、制度改正の影響は確実に広がっていくでしょう。

次章では、実際に制度変更によって影響を受けることになった事例をいくつか紹介しながら、よりリアルな視点で改正の意味を探っていきます。


影響を受ける可能性のあるケーススタディ:実際の住宅事例で読み解く

制度の改正によって理論的に何が変わったのかを理解することも重要ですが、実際に「どのような場面で影響が出るのか?」を具体的に知っておくことで、よりリアルな判断材料が得られます。この章では、4号特例の見直しによって影響を受ける可能性のある典型的な事例をいくつか紹介し、どのような対応や準備が求められるのかを解説します。


■ ケース1:築30年の木造住宅で耐震補強+間取り変更のリフォームを予定

【状況】 ある家族が住む築30年の木造2階建て住宅。老朽化に伴い、1階の和室をLDKに改装し、同時に耐震補強工事も行うことに。

【影響】 以前であれば、建築確認が不要だったような間取り変更でも、構造に影響が及ぶため、今回の改正後は構造審査が必要になるケース。耐震補強の方法や壁の撤去箇所によっては、構造図書の作成が求められます。

【対応】

  • 事前に建築士と相談して「確認申請が必要かどうか」をチェック

  • 工事スケジュールに2~3週間の余裕を持たせる

  • 追加の設計費・審査費の確保


■ ケース2:空き家バンクで購入した古民家をリノベして民泊化

【状況】 地方の空き家バンクを活用して古民家を購入。水回りの一新、間取りの変更、屋根補強などを伴うフルリノベーションを計画。

【影響】 民泊・宿泊施設への用途変更に加えて、屋根や柱を補強するような構造変更があるため、確認申請+構造審査が必須となる可能性が高い。また、地域によっては文化財や景観条例との兼ね合いも生じることがある。

【対応】

  • リノベ前に行政へ「用途変更」の事前協議を行う

  • 建築士主導で構造補強案を設計し、確認申請を前提に進める

  • 審査・設計期間を2か月以上見込む


■ ケース3:2階にベランダを新設+一部増築を希望

【状況】 家族構成の変化に伴い、2階の一部にベランダスペースを新設し、1階リビングの奥を2坪程度増築する計画。

【影響】 ベランダの新設や小規模な増築であっても、既存構造に負荷がかかる設計になるため、構造安全性の検討が必要になる場合がある。増築部分の確認申請だけでなく、既存部分との構造整合性も問われる可能性がある。

【対応】

  • 構造図面が残っていない場合、既存住宅の調査から始める

  • 増築に関わる構造設計を事前に実施

  • 審査が長期化しないよう、書類準備は専門家に任せる


■ ケース4:建売住宅の購入者が間取り変更を希望

【状況】 新築建売住宅を購入予定だが、購入後すぐに間仕切り壁を撤去して広いLDKにしたいという希望。

【影響】 完成後すぐの改修であっても、構造壁を取り払うことで耐震性に影響が出ると判断された場合、確認申請が必要となるケースがある。買主が「気軽にできると思っていた」リフォームが、実は法的に複雑な手続きを伴うことも。

【対応】

  • 売買契約前に、売主や施工会社に間取り変更の可否を相談

  • 建築士に依頼して、変更が安全かどうかの確認と書類準備を依頼

  • 必要に応じて、販売会社経由で確認申請の手配を行う


これらの事例から見えてくるのは、「これまでは問題なく進められていた工事でも、今後は法的チェックをクリアする工程が加わる」という現実です。想定外のコストや時間がかかる可能性がある一方で、安全性や品質がより担保されるという側面もあります。

次章では、このような時代の変化に対応していくために、施主や依頼主が押さえておきたい具体的な行動と心構えについて整理していきます。


知っておきたい!施主・依頼主が取るべき具体的アクション

制度が変わったからといって、誰もがすぐに専門知識を身につけられるわけではありません。むしろ、建築のプロではない一般の施主や依頼主こそ、**「知らないことで損をする」「知らなかったでは済まされない」**時代になったとも言えるでしょう。

そこでこの章では、今回の4号特例の見直しを踏まえて、これからリフォームやリノベーション、新築などを検討する方が取るべき具体的なアクションを整理します。


■ 1. まずは「確認申請が必要かどうか」を設計前に確認する

改正後の最初の一歩はここからです。

間取りの変更や耐震補強を含むリフォーム、あるいは増築・用途変更といった工事には、「確認申請が必要になるか?」を着手前に建築士や施工会社と確認することが必須となります。特にリフォームは「つい手軽に始めがち」な分、手続きの盲点になりやすい分野です。

確認申請が必要になると設計段階の手続きが増え、工期も長くなります。設計費用や審査料も見込んで、スケジュールと予算を事前に再確認するようにしましょう。


■ 2. 工務店やリフォーム業者選びは「申請対応力」で判断する

これからは、「安い・早い」だけでは信頼できる業者とは言えません。確認申請や構造計算にきちんと対応できる体制があるか、行政や確認検査機関とのやり取りに慣れているかといった**“法令対応の実績”**が、施工業者選びの新しい基準になります。

特に小規模業者では、法改正への理解が追いついていないケースもあります。相談時には「この工事、確認申請って必要ですか?」とあえて聞いてみるのも、業者の知識レベルを測る一つの方法です。


■ 3. 設計図や構造図を保管・活用する習慣を持つ

既存住宅の改修では、建物の構造が不明なまま話が進むことがあります。しかし改正後は、構造の整合性を審査するために、元の図面が重要な資料になります。

「図面は引渡し時にどこかにもらったような…」という状態ではなく、しっかりファイルで保管し、設計事務所・施工業者と共有できる体制を整えておくことが重要です。もし図面がない場合は、現況調査による再作図を依頼する必要があります。


■ 4. 予算計画に「設計+申請コスト」の上乗せを想定しておく

今後は「工事費+設計費+申請費+審査費」を前提とした予算計画が基本になります。これまで想定していたリフォーム費用より、10〜15%程度のコスト上昇があると考えておくと安心です。

また、審査がスムーズに進むよう、専門家との事前協議や相談費用を惜しまない姿勢も、結果的には時間や手間の節約につながります。


■ 5. 「計画の見直し」も柔軟に選択肢に入れる

設計や計画段階で、「この案だと構造的に難しい」「審査が通らない可能性がある」となった場合は、一度立ち止まって設計を見直す判断も重要です。

無理に通そうとして時間やコストが膨らむより、合理的な範囲で代替案を考えることが、結果的に満足度の高い住まいづくりにつながります。柔軟性を持った対応が、制度改正後の賢い選択と言えるでしょう。


このように、施主側にも“知る・備える・相談する”という行動が強く求められるようになります。ただし、すべてを一人で完璧にこなす必要はありません。信頼できるパートナーや専門家と協力しながら、一つひとつの判断を丁寧に行うことで、安心して住まいの計画を進めていけるはずです。

最後に、この記事全体を振り返りながら、制度改正をどう受け止め、これからの住まいづくりにどう活かすかをまとめていきます。


まとめ:新たなスタートの中で「損しない」ために知っておくべきこと

2025年4月、「4号特例」が見直され、日本の住宅づくりは静かに、しかし確実に新しいフェーズへと進み始めました。これまで「確認申請がいらないから手軽だった」「設計は設計士に任せておけばよかった」とされていた領域に、法的なチェックと説明責任が加わることにより、住宅の品質と安全性に対する社会全体の期待値が一段と高くなったと言えます。

今回の制度改正は、「家を建てる人」「リフォームする人」「住まいを選ぶ人」すべてにとって、無関心ではいられない変化です。新築だけでなく、これまで見過ごされがちだったリフォームやリノベーション、増改築の現場にまで影響が及ぶ以上、施主側にも“制度に向き合う意識”が問われる時代になったといえるでしょう。

しかし、それは同時に、より安全で信頼できる住宅が増えていくチャンスでもあります。

構造のチェックが入ることで、設計者や施工業者の質も可視化され、安心して住める家が標準になっていく。申請に手間や時間はかかるかもしれませんが、その分「見えない不安」が減り、「説明できる安心」が手に入る。これは決して後ろ向きな変化ではなく、むしろ住まいづくりにおける“新しい常識”が始まった証とも言えるのです。

今後、家づくりや住まいの再設計を考えるすべての人にとって、「制度の変化を知ること」「信頼できる専門家とつながること」「早めに準備を始めること」が、これまで以上に重要になってきます。

制度は変わった。これからは“知っている人”が、確実に一歩先を行く時代。

本記事が、皆さんの住まいの未来を守る一助となれば幸いです。

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